山翠舎のブログ

【小さなお店をつくる山翠舎のデザインマニュアル】 vol.1カウンター編/中編

作成者: Admin|Dec 8, 2021 8:23:51 PM

山翠舎のベテランデザイナーであるKさん、Yさんへの率直な疑問を、見習いデザイナーのHさんが投げかけ、業界動向を踏まえながら、基準寸法やリアルな経験に基づく考え方を図解していく企画。

今回は、小さなお店のデザインとして避けて通れない「カウンター編」、前編に続く中編です。

前編はこちら▶vol.1カウンター編/前編

登場人物/見習いHさん、ベテランYさん、ベテランKさん

【コンテンツ】

お題その1/カウンター形状について
お題その2/カウンターやイスの高さ、脚置き台について
お題その3/荷物置きについて
お題その4/厨房の吊り棚について

【中編】お題その2/カウンターやイスの高さ、脚置き台について

Hさん
カウンターでも高さが低めだったり、スタンディングのハイカウンターだったりといろいろで、イスの高さもどのくらいがいいのか、いつもわかりません。

脚置きも、どのイスの高さから必要になるか。カウンターとイスの差尺(座面から天板の高さ)も、提供するメニューによっても違うのでしょうけど教えてほしいです。

Kさん
まず、ローカウンターから。一般的なテーブルの高さが700mmで、ローカウンターが700〜750mm、イスの座面の高さ(シートハイ)が450mmですと、差尺※は250〜300mmになります。居酒屋のように食事とお酒を提供する場合の差尺は300mmとなります。

ハイカンターの天板の高さは一般的には900mmから、マックスの高さが1150mm。イスは低いほうが腰かけやすいので、900mmのハイカウンターに600mmのシートハイが基本です。

650mmにしてもいいのですが、実際に座ってみると床からの差があって座りにくいことがわかります。特に身長の小さい女性は大変です。

それと、一般的に高い位置で座っていると疲れるので、僕はなるべくイスを低くしたいと考えています。そのため、ハイカウンターは900mmよりなるべく高くしないという考え方です。

高さ1150mmの天板となるとイスの高さは850mmとめちゃ高くなる。だから、やはりカウンターは低いほうがいい。

※差尺さじゃく=[テーブルの天板高さ]-[イスの座面の高さ]

Yさん
Kさんがあまり高くしたくないというのはあるけど、カウンターの高さを1m以上にするのは理由があるんです。

大量の水を使う厨房から客席へ水はねをしないようにしたり、厨房の床下にグリストラップ(油脂や残飯、野菜くずなどが直接下水等へに流出することを防ぐ、業務用の厨房に設置が義務付けられている装置)を埋め込むために厨房の床は客席よりも25cmほど上げるので、お店の人がカウンター席のお客さんを見下ろすことを避けるためにカウンターを高めにします。

ちなみに厨房との床の高さを揃えるために客席の床の高さを上げるのは、20〜30坪の店であれば可能ですが、なによりお金がかかります。

Kさん
それと、床の高さを上げると天井も低くなりますから難しいですね。

Yさん
あとは、脚置き台について。

今設計しているお店は1mのカウンターの高さに700mmの高さの丸スツールで計画していますが、脚置き台を数cm高くして下に収納箱を設置し、お客さんが上着などを入れられるようにしました。収納がとにかく少ないので、そういう意味でもカウンターを高くすることで収納スペースもできます。

Hさん
脚置き台や枕木をカウンターの下によく置きますが、1mのカウンターの場合、足置き台の高さはどのくらいになりますか?

Kさん
座面より45cm下に足をのせるようにしないと。

Yさん
高さ1mのカウンターをつくるなら、差尺300mmを引くと座面が700mm。450mm下ということは単純計算で脚置き台は250mmの高さになります。それを基準にして、1〜2cm前後高くしたり低くしたりします。

▼Bar Scotch Watch スコッチウオッチ カウンター下の足置き台

Kさん
先ほど、「厨房の床にグリストラップを埋め込むことによってカウンターを高くしないといけない」とYさんが言っていましたが、高くしたくないならどうするか。

考えられるのが、付け台※を高くして、その分カウンターを下げて調整すること。ただ、付け台が高くなるほど厨房とお客さんを遮ってしまう問題があるので、それをどう解消するか。

※付け台=カウンターの一段高くなっている部分(▼Taverna&Enoteca Bar NOBU カウンター)


Hさん
Kさんは付け台の高さはいつもどのくらいで設定していますか?

Kさん
15cmくらいかな。

Yさん
今、僕が設計しているお店は付け台の高さは30cmです。

Kさん
ラーメン屋とかがその高さが多いですね。

Yさん
事情があってカウンターの後ろ側に厨房のガスレンジやフライヤーがくるようなら、付け台も高くしないといけません。

Kさん
付け台を高くするのがよくないというのは考え方がいろいろあって、お客さんとコミュニケーションをとったり、盛り付けや包丁さばきを見せたい場合は低いほうがいいんですが、コミュニケーションをとりたくない人もいます。その場合は付け台を高くして、なおかつ酒の瓶を並べて閉鎖してしまう内装もあります。意外とそういうシャイな人もいます

Yさん
恵比寿のお店はカウンターの高さが1mで座面700mmですね。付け台もあって、角材のようなものを机の上にのせました。

オーナーの最初の要望は「手元を見せたいから付け台はいらない」というものでしたが、いざ開業すると、やはり手元を全て見られるのはやはりやりにくいようで、角材をのせました。

▼波の家 カウンター


Kさん
職人さんから聞いた話ですが、カウンターのみの寿司屋で、付け台もなくて手元が丸見えで提供する場合、緊張して1〜2時間で疲れてしまうそうです。だから、そこまで緊張感をもって調理するというのは大変なんです。

Yさん
ちなみにカウンターの後ろに厨房機器を置くときに、今設計しているお店は、厨房機器の高さを850mmにしてほしいというオーダーでした。そのオーナーさんの経験上、厨房機器が高いほうが腰に負担がないと感じているそうで、その場合はおのずと付け台も高くなります。

Kさん
今の若い人は背が高いうえに靴の分の高さもあるので、基本的に厨房機器の高さは850mmがいいと思っています。800mmは昔の高さ設定で、それより高くしたほうが使いやすい感じがします。

ただ、カウンターの高さからいろいろな設計が関係するため、結果的に800mmになっているところが多いのですが。

Hさん
ほかにも、いつもわからないのが、カウンター側にシンクを置きたいときに、水栓を隠したいがために付け台をつくるべきか、シンクがあるところだけ何か別のものをつくるか。そもそもカウンター側にシンクを設けないほうがいいのかということです。

Kさん
カウンター側にシンクを設置して洗い場を設けると、お客さん側に水が飛ぶのであまりよろしくないんですが、別の考え方として、小さな店の場合、壁側にシンクを設置するとカウンターのお客さんにずっとお尻を向けることになってしまいます。

それもよくないですし、汚れた洗い物がお客さんの目に入るので、僕の考えでは洗い場はカウンター側にもっていったほうがいいと思っています。

そこで、なるべくカウンターからシンクが見えないようにするには、シンクの手元のところだけ銅板の立ち上げなど水のはねにくい意匠を設けるとか、角材を置いてディスプレイで手元を隠すなど。

付け台も全部隠す必要はなく、見せたいところもあれば隠したいところもあるので、ひとつのカウンター内で付け台を立ち上げるところとつけないところをつくるやり方もあります。そのほうが安定感もありますし、それぞれの作業場の意味合いが出てきます。

Yさん
それを全くその通りやっているのが、先ほどの恵比寿のお店です。L字型のカウンターで、シンクとお客さんに直接見せたくないところだけ角材が置いてあり、それ以外の部分は開いています。この店にはノウハウが詰まっています。

▼波の家 カウンターに置いた角材


ちなみにデザインした側として一番やってほしくないのは、カウンターにボトルをいっぱい並べることです。

Kさん
一升瓶で閉鎖してしまう方法ですね。

僕はカウンターにおばんざいなど大皿の惣菜がのっていて、お客さんから「これちょうだい」といわれて盛り付けて提供してくれるような店が好きですね。

Hさん
カウンター席のイスの選び方も気になります。横から座るとなると、やはり肘かけがついていないほうがいいとか、どう選べばいいんでしょうか。

Yさん
そもそもハイカウンターは、イスに横から座るので肘かけがあると入れません。

ローカウンターの場合は肘かけがあると幅を取るので、客単価2〜3万円で、客数がそんなに入らなくてもいいという店でないと無理です。

客単価5,000〜6,000円程度の居酒屋なら、1人でも多くお客さんを入れて収支を合わせるので、肘かけイスはありえません。

Kさん
肘かけのついたイスは「落ち着いた高級感」という考えになるので、ローカウンター向けになり、イス同士のピッチも通常は600mmくらいですが、肘かけイスになったら800mmほどになります。

なぜならイス自体の幅も、通常450mmくらいが550mmほどに広くなるからです。さらに人も横から入るので、かなり広くしてあげたほうがいい。ぎちぎちに座らせてもお客さんは嬉しくないので、イス同士を離した距離がよくなります。

高級感を出したいなら、ローカウンターの肘かけイスにしたほうがいいという考え方です。


後編につづく