山翠舎のベテランデザイナーであるKさん、Yさんへの率直な疑問を、見習いデザイナーのHさんが投げかけ、業界動向を踏まえながら、基準寸法やリアルな経験に基づく考え方を図解していく企画。
今回は、小さなお店のデザインとして避けて通れない「カウンター編」、前編、中編に続く後編です。
中編はこちら▶vol.1カウンター編/中編
登場人物/見習いHさん、ベテランYさん、ベテランKさん
Hさん
カウンター席の荷物置きの考え方についても教えてください。
Kさん
天板下の荷物置きは基本的に付けないようにしています。
なぜなら棚を付ける場合、カウンターに奥行きがないと荷物置きにヒザやスネがあたるから。ただ、カウンターの奥行きが深くて腰かけであれば、つけても問題ありません。
Hさん
カウンターの奥行きが600mmあれば、腰壁の厚みが100mmとして200mmの棚の奥行きになるんですね。
Yさん
棚をマガジンラックのようなかたちの斜めにするという方法もあります。そうすると、カウンターの奥行きの寸法が狭くても棚をつけられる場合があります。
Kさん
ただ、このかたちはものが取りにくいし、ものが中に入り込んで忘れ物をされてしまう場合もあります。
Yさん
忘れ物の問題のほかに、ゴミもたまりますね。
Kさん
なので、この形状にするなら下の板を部分的に抜いたりして、ものやゴミが落ちるところをつくったほうがいい。
あとはカウンターの横にカゴを置いたり、僕は嫌いな方法だけど、Yさんがいったようにハイカウンターのイスの中にカゴを入れるパターンもあります。
Yさん
ただ、もともと荷物置きがついたイスは少ないんですよね。
なので、イスにトレイを付けてあげることもできます。そんなに高いものではありません。
あとは、ハイカウンターにするなら脚置き台の下に収納ボックスを入れる方法もあります。ボックスにキャスターをつけると引っ張り出せるようにもなります。ただ、キャクターの分、ボックスは浅くなりますが。
カウンターに背もたれつきの椅子は置きたくないので、苦肉の策で足元に箱をつくって置くこともあります。
ほかに、店によってはバックハンガーを貸し出してカウンターに引っかけることもあり、コンパクトな女性のカバンなら問題ありませんね。
Hさん
カウンターの吊り棚についても聞きたいです。
Kさん
吊り棚は天井から吊りますが、食器を付け台の上にのせてほしくないがために吊り棚をつくって、そこに皿や器などをのせるシステムにしたお店があります。
吊り棚の下にもう一段棚をつけて、食器をディスプレイのように見せる吊り棚です。見せる演出をしたうえで取りやすい設計がいいと考えています。
Hさん
吊り棚の高さはどのくらいですか?
Kさん
どこからの高さかが問題で、床から160cmくらいかな。カウンター内での作業中に頭が当たる問題があるので、オペレーションで注意しなければいけないんですが、それは吊り棚の位置の問題になります。
作業台のギリギリに設置すると頭が当たるので170cmくらいの高さがないとダメですが、付け台のラインにつけるんです。世田谷の「うろこ雲」さんや四谷の「ろっかん」さんがその位置に付いていますね。
▼うろこ雲 付け台の真上につけた吊り棚
「ろっかん」さんはご主人が陶芸をやっていて、焼いた器を見せたいということで収納を考えました。見せたくない細々したものや乾物類は竹の籠に入れ、棚の上にのせてディスプレイにするよう提案しています。
▼ろっかん 食器をディスプレイする吊り棚