店舗づくりは、不動産探しから始まり、資金計画、融資の締結、明確なコンセプトづくり、そして設計・デザインを経て、ようやく完成を迎えます。
そこに至るまでに必要なさまざまな要素は、このコラムでも、数多くをご説明してきました。
今回のテーマは、開業の準備と並行して、ぜひ考えていただきたい「保険」についてです。
あまり考えたくはない話ですが、あらゆるリスクに備える保険は、
安定した経営を裏から支える「安心材料」として、非常に大切です。
本コラムから3回に分けてご説明・ご紹介したいと思います。
その第1回目となる今回は、気になる事故内容と、支払われた保険金の例です。
※記事制作協力:株式会社セーフティーネット
具体的にどんなリスクがあり、保険に入ることでどのくらい補償されるのか?
ここでは、店舗経営の中に、実際に起こった事故事例を紹介します。さらに、その時に支払われた気になる保険料についても解説していきます!
まずは、リスクの代表例である、火災のケースです。
【事例1】────────────
テナントで営業していた店舗の煙突から失火してしまい、建物の復旧費を家主から賠償請求された。
●支払保険金→約1400万円
「火災」をはじめ、「水道管の破損」「漏水」「漏電」はリスクの代表例です。
家主との賃貸契約によって、自分が借りている空間で発生した事故は、借主の責任となります。
そのうえ、店舗の焼失はもちろんですが、インフラ関係の事故は、店舗を閉鎖して復旧しなくてはいけないケースが多いため、経営にとっては大変な損失になります。
次は、季節や天候に起因した事例です。
【事例2】────────────
解けた雪が凍りつき、落下する際ネオンサイン管も一緒に落下させ破損。
●支払保険金→約20万円
【事例3】────────────
真夏の飲食店、業務用の冷蔵庫がオーバーヒートし、機能停止。冷蔵庫のコントロール基盤を交換した。
●支払保険金→約8万円
ここ最近の異常気象で、首都圏でも突然の大雪にみまわれることがあります。
事例2のような現象とは、今まで無縁だった地域でも起こる可能性が十分考えられます。
事例3では、商品原材料の保険に未加入だったため、冷蔵庫内の材料は「対象外」となってしまいました。
この他、店舗に訪れたお客様による破損事故も発生しています。
【事例4】────────────
店舗内水洗トイレの水槽が酔っ払いに割られ床等張替、便器の取り付けが必要となった。
本来は加害者に損害賠償すべき事案だが、特定できず。
●支払保険金→約30万円
【事例5】────────────
VIPルームで行われたパーティーで、ジュークボックスが壊された。
泥酔客で犯人不明となる。現在も調査中であるがとりあえず修理が必要。
●支払保険金→約30万円
【事例6】────────────
店舗外に出していたピエロの看板が深夜、酔っ払いに壊された。
●支払保険金→約50万円
お酒を出す店舗にとって、酔っぱらったお客様による事故は、切っても切れない事案です。
犯人探しや、お客様に対しての賠償請求も結構ですが、まずは、店舗を復旧して正常な状態に戻さなくてはなりません。
また、まったく予期せぬ事故で店舗に損害が発生するケースもあります。
例えば、盗難や交通事故による損害です。
【事例7】────────────
深夜、無人の店舗に自動車が突っ込みガラス、店舗内楽器が破損し、ドライバーは逃げた。
●支払保険金→約250万円
【事例8】────────────
深夜、店舗に泥棒が侵入し、室内を土足で汚した挙句、レジをこじ開け、翌日の釣銭約5万円を盗まれた。
●支払保険金→約7万円
まずは、従業員やお客様にケガがなかったことを喜ぶべきでしょう。
ちなみに、空き巣の検挙率は50%~60%と言われています。仮に検挙できたとしても、犯人に支払い能力があるかどうかは疑問です。
ここまでご紹介した事例は、言うなれば、お店側は何も悪くない「被害者」の場合がほとんどです。
もちろん、排水管のつまりや、換気扇のメンテナンス不足による漏水・失火はオーナー様にも責任はあります。
起きた事故の原因究明は大切ですが、
何よりも必要なのが、速やかにお店を元通りにして、通常営業を再開することです。
そうした時に、速やかに支払われる保険金が役に立ちます。
万が一、保険に入っていないと考えると…。
どんな繁盛店でも状況によっては、店舗の経営が困難になってしまいます。
ちなみに、ここで紹介している保険内容の掛金については、個社ごとに差はあれど、ごく一般的な金額のものばかりです。特段、多額の保険金をかけている事例ではないことを、付け加えておきます。
次回は、お店側が予期せず「加害者」になってしまい、賠償請求されてしまった実際の事例をご紹介したいと思います!