山翠舎のブログ

【知っておきたい制度・法律】古民家の改修工事ー長く住むためにー

作成者: からかま|Oct 20, 2021 1:42:58 AM

こんにちは。唐鎌(からかま)です。↑この写真は、山翠舎が古民家を再生した熱海の旅館竹林庵みずの(施工事例リンク)です。古木の梁や柱の趣ある室内でありながらモダンなデザインです。

さて今回は、前回に引き続き「古民家の改修工事ー長く住むためにー」についてお伝えします。

どんな家も建てた当時のまま何十年も存在することはできません。規模の大小はありますが改修工事が必要になります。屋根、床下、外壁、小屋裏の改修、耐震補強工事についてお話いたします。

少しでもあなたの夢を叶えるお役に立てればうれしいです。

前回は用途変更における防火対策をお伝えしました。古民家利活用し、店舗や宿泊施設などへ変更したい場合は、建築基準法などの法令に従って義務的に建物の改修工事を行わなければなりません。

▼前回の記事をご覧になりたい方はこちら▼

【知っておきたい制度・法律】古民家からの用途変更における防火対策

今回は義務的ではないけれど、家を長く保ち続けるために必要な改修工事についてお伝えします。

なぜ改修工事が必要なの?

古民家に限らず、どんな家も建てた当時のまま何十年も存在することはできません。車や自転車、いつも使っている道具、あなた自身の体だってそうです。定期的に点検や健康診断をして状態をチェックしたり、修理が必要になったら直したり、ケガをしたときは手当てをしますよね。

家だって同じです。

一般的に築後50年以上の家を古民家と呼びます(明確な定義はありません)が、年月の経過とともに改修工事が必要になる場合がほとんどです。この記事では、古民家を長く保つために、経年劣化による腐朽や雨漏りの改修工事についてお話しします。

改修工事を行うことで、家はまた建物本来の価値を取り戻し、住まう人と長く生活を共にすることができるのです。

屋根の改修工事

屋根は台風、豪雨、降雪など厳しい環境にさらされており、経年とともに木材が腐朽しやすい部分です。

瓦締め直し工事:瓦屋根の場合、築30~40年で瓦締め直し工事を行います。瓦締め直しとは、経年とともに生じたズレや雨漏りを直すために、一度瓦を一度剥がし、補修を行ってから、再度瓦をもとの場所に積みなおす工事のことです。

瓦の状態が良ければ、既存の瓦を再利用したり、部分的な葺き替え工事となりますが、状態が悪い場合は屋根全面葺き替え工事が必要になります。屋根の全面葺き替えには数百万の工事費用がかかりますのでご注意ください。

屋根材改修:瓦屋根のメリットは50年以上もの耐久性がありますが、高価であること。また、重いために耐震性能が低下するデメリットもあります。現在人気なのがガルバリウム鋼板の屋根で、メリットとしては、耐久性が約30年と比較的長持ちし、軽量で耐震性が高く、防水性も高いです。工事費用も比較的安価なため人気があります。

▼ガルバリウム鋼板の屋根(引用:テイガク

〇ルーフィング(防水シート)を張る:屋根の下には、雨漏り対策として欠かせない「ルーフィング(防水シート)」というものが張られます。しかし、古民家の場合、特に建築後一度も改修していない屋根はルーフィングがない場合がほとんどですので、屋根材改修とともに工事を行う必要があります。

もしあなたが古民家活用のために物件を探しているには、雨漏り跡がないか、過去の改修工事の有無など屋根の状態をよくチェックすることが大切です!

小屋裏の改修工事

小屋裏も結露や雨漏りにより木材が腐朽しやすい場所です。雨漏りの原因になるのは、屋根の下葺き材の施工精度により、裂けや小穴がある場合です。

結露は、室内からの昇ってきた水蒸気が小屋裏に溜まり、冬はそれが冷やされて結露となります。結露は建物の腐朽につながるため対策が必要です!

〇防湿気密シートで覆う:対策としては、天井面を防湿気密シートで覆うことで、室内の湿気が小屋裏に移動しなくなり結露のリスクを大幅に下げられます。

〇小屋裏換気:小屋裏の空気を常に外部の空気と入れ替えることで結露を防ぎます。また、夏は60℃にもなる小屋裏の熱を排出する働きもあります。

天井裏に点検口設け、定期点検を行うことで結露や雨漏りをチェックすることが重要です。

床下の改修工事

床下は地面からの湿気と基礎コンクリートが含む余剰水の放出により、高湿になりやすいです。普段見えない箇所であるため、解体するまで床下の柱や板材が腐っていることに気がつかない場合も多々あります。

湿気の多いところはシロアリ被害も受けやすいという危険がありますし、かび臭く、ジメジメとした部屋で生活することになってしまいます。

〇柱の修復:床下の柱が腐朽している場合は、継手で補修します。柱1本全部取り替えるのではなく、いたんだ部分だけを切って、新しい木材を継ぎ足して補修します。大工さんの高い技術が必要です。

引用:シェアベースマガジン

〇コンクリート基礎と床下換気口:基礎コンクリートの修理としては「ベタ基礎」施工や「防湿コンクリートを併用した布基礎」施工が挙げられ、どちらの施工も地面からの湿気を防ぐために効果的です。さらに、基礎パッキン(図)や床下換気口で通風を図ります。プラス、通風換気扇を設置することで床下の乾燥をさらに促進する効果を得ることができます。

コンクリート腐朽前に建てられた古民家のほとんどは、基礎の石の上に直接柱を立てる「石場建て(いしばだて)」工法で建てられています。石場建ての土台に対しても、地面からの湿気やカビによる腐朽防止、防蟻面からコンクリート基礎への改修を行う場合があります。

〇シロアリ対策:コンクリートの床下でもシロアリ被害が出ることが多くあります。シロアリ駆除業者に依頼をして薬剤を散布してもらうなどの対策をとる必要があります。

〇定期点検が重要:床下は普段目に見えない部分であるため、定期的に点検を行い、カビや腐朽、シロアリ被害に早急に気づき、対策をしなければなりません。自分の体も定期的に健康診断を行い病気の早期発見・治療を行いますよね。家も同じことが言えるのです。

外壁の改修工事

古民家はめちゃくちゃ寒いです。なぜなら断熱材が入っていないから。冬は外の冷気が壁から部屋に入ってきます。寒い家は体を冷やし健康にも悪影響を及ぼすことがありますし、暖房器具の効きも悪くなります。他にも寒さの理由は、経年劣化による建物のゆがみから生じるすきま風なども挙げられます。

〇断熱:既存外壁の外側に発泡系断熱材を貼り付ける方法があります。メリットは、土壁や内部仕上げをそのまま残すことができ、断熱性能も上げやすい工法です。ただし、外観の柱や土台などが見えなくなるため、従来のイメージを残すためには、つけ柱等の造作が必要になります。

〇透湿防水シートを外装材の下に覆う:木材が腐朽しないように壁の漏水対策も重要です透湿防水シートを外装材の下に覆うことで、建物外部からの雨水の浸入を防止し、壁体内に生じる湿気を外部に逃がすことができます。

 

耐震補強工事

専門家による耐震診断を行ったうで耐震工事を計画します。工事内容には以下が挙げられます。

〇耐震金物の取り付け:土台や筋交い、柱などの接合部に耐震金物を取り付け、建物の強度を補強することで耐震性がアップします。

〇壁に筋交いを設置して補強:地震に耐える壁が少ない場合や壁の配置バランスが悪い場合、壁に筋交いを設置し、耐震性を増すことで倒壊などの危険を防ぎます。

〇耐震パネル取り付け:既存の壁に耐震パネルを取り付け強度を増す、新たに壁を増やすことで、耐震性を向上させます。

〇屋根の補強と屋根材の取り替え:屋根材を軽量のものに取り替え、建物にかかる負担を軽減。地震による揺れも小さくすることができます。(引用:ホームプロ)

▼参考:耐震補強費用の目安(単価)(引用:古民家活用マニュアル)

▼参考:耐震改修工事の状況(引用:古民家活用マニュアル)

まとめ

古民家の改修工事は、木材の腐朽を防ぐために結露対策、雨漏り対策がとくに重要!

屋根:30年に一度程度は瓦締め直し工事を行い、屋根の状態によっては屋根材の見直し(耐久性、費用面でガルバリウム鋼板が人気)を含めて計画する必要があります。屋根の全面葺き替えは大きな工事費用が必要なので資金計画が重要です。

小屋裏:防湿気密シートと小屋裏換気で雨漏りと結露対策を行いましょう。定期点検を行いチェックをしましょう。

床下:柱の腐朽は継手で修復。コンクリート基礎と床下換気口で結露・カビを防ぎましょう。シロアリ駆除をしっかり行い、定期点検でシロアリや結露のチェックを行うことが重要です。

外壁:寒さ対策にも断熱材入れて快適さアップさせましょう。既存外壁の外側に発泡系断熱材を貼り付ける方法があります。透湿防水シートを外装材の下に覆うことで木材の腐朽を防ぎましょう。

耐震補強工事:専門家による耐震診断を行ったうで、耐震金物の取付工事などを行い、耐震性アップさせましょう。

 

山翠舎では古民家解体・再生移築を手掛けております。

ご相談を随時受け付けておりますのでお気軽にご相談くださいね。

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引用:長野県HP長野県『古民家等活用マニュアル』

引用:住む。季刊 冬72 P76~79