SDGs(持続可能な開発目標)」とは、2030 年までに国際社会のすべての人が貧困に終止符を打ち、地球を保護して平和と豊かさを享受できる社会を実現しようという17の国連目標です。
2006年から古木を活用した事業を開始し、持続可能な社会づくりに取り組んできたわたしたち山翠舎の活動は、自然な流れでこのSDGsの理念と合致していました。
2019年には環境に配慮した企業として長野県SDGs推進企業に第1期登録。
2020年には古民家の解体から古木にまつわる一連のシステムを「古民家・古木サーキュラーエコノミー」として、より明確なかたちで体系化したことでGOOD DESIGN賞も受賞しています。
また、社員に対するSDGs教育にも力を入れており、SDGsの社内浸透も実践しています。
そんな山翠舎のSDGsの取り組みを、ご紹介します。
山翠舎では、古民家から得られる上質で入手ルーツが明確な古い木材を「古木」と名付けて商標を取得し、古民家解体から設計、施工まで手がけています。
古民家には日本の建築や職人文化が継承され、住み手の思い出や歴史が詰まっています。また、古木は経年変化で表情が美しく変わります。そうした古民家が取り壊され、廃棄されている現状を「もったいない、活用したい」と感じたことから生まれた事業です。移築や再生によって古木を新たな空間に使うだけでは「モノ」の循環のみにとどまりますが、
山翠舎では「モノ」「コト」「トキ」の3つを循環させ、付加価値を高めることで、循環型経済で最も重要な「利益」を生み出す仕組みをつくっています。これにより、古民家の所有者よし、利用者よし、事業者よし、社会よし。
「全方よし」のシステムで環境への負荷も軽減させ、自然の循環による持続可能性も見出しています。
昨今、空き家の増加はひとつの社会問題になっています。一方で、空き家となっている古民家の再利用は高度な技術とコストが必要なことから、取り壊され廃棄されているのが現状です。
そこで山翠舎は、古民家を職人の手仕事で丁寧に解体し、貴重な部材を管理・保管して再利用しています。古木の在庫量は国内トップを誇ります。
この【モノ】の循環を円滑に進めているのが、当社独自のマッチングシステムです。
古民家の所有者から管理業務を請け負い、古民家をデータベース化して、希望者の計画に最適な古民家や古木を見つけ出すのです。
SDGsの目標の12番目に「つくる責任 つかう責任」というものがあります。わたしたちは古木という「モノ」の循環により、持続可能な消費と生産のパターンを確保しています。
また、古木という新たな産業を生むことで、9番目の目標である「産業と技術革新の基盤をつくろう」も実現し、さらに空き家問題の解消を通じて、11番目の目標である「住み続けられるまちづくりを」にも貢献しています。
そして、わたしたちの大きな特徴のひとつが、古民家・古木の利用促進に向け、古材専門工事も請け負っていることです。
古木や古民家の味わいが好きな人は少なくありませんが、なかなか広まらないのは、流通に関する構造的な問題があるからです。
古民家や古木は管理そのものにコストがかかりますし、古木は一本一本異なり、加工には昔ながら高度な技術をもった職人の存在が不可欠で、古木を生かした空間づくりのためには、古木のよさを知り尽くした建築の専門家も必要です。
わたしたちはその仕組みを整え、管理している古民家や古木を外部の建築・施工会社に古木を提供するほか、古木の扱いに不慣れな場合は、古木に関する専門工事部分だけをわたしたちの熟練大工が請け負う仕組みをつくることで、古木の普及を図っています。
これにより、SDGsの17番目の目標である「パートナーシップで目標を達成しよう」も実現しています。
また、わたしたちは古民家が廃棄物として焼却処分されなくなることで、CO2の排出も抑制しています。
こうした環境負荷の軽減により、SDGsの13番目の目標である「気候変動に具体的な対策を」と、15番目の目標である「陸の豊かさも守ろう」を達成しています。
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2019年には、世界的な森林認証である「FSC認証」を取得。
古材としては世界初の快挙となりました。「FSC認証」とは、昨今、アマゾン川流域や東南アジアなどで問題になっている違法伐採など、環境破壊につながるものを排除し、木材の産地や加工・流通過程が管理された合法で持続可能な木材を使おうという取り組みです。
認証には、責任をもって管理された森林の木材であるかを審査するFM(Forest Management)認証と、認証材が消費者の手に届くまでの加工・流通・管理過程を認証するCoC(Chain of Custody)認証があり、山翠舎は後者のCoC認証を取得しました。
特徴的なのが、通常であれば山に生えている木が認証の対象であるのに対し、わたしたちは古材に対する認証が取得できたこと。FSC認証機関からも、前例がなく画期的だと評された認証です。
わたしたちが取得できた理由が、古木の入手場所や年代、経路をしっかり管理していたことにあります。森林に代わる古民家から産出したものを製品として、不適格な木材と混ざることなくお客様のもとに届けていることから認証を得ることができました。
さらに森林を保護し、CO2を削減する取り組みが、古木の販売1本につき100円を拠出する長野県県有林の森林支援です。
EVI(プロジェクト・企業・消費者の3者をつなぎ、環境活動に貢献する環境貢献プラットフォーム)を通じてJ-クレジット(CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量)を購入することで、カーボン・オフセット(日々の生活でどうしても排除できないCO2など、努力しても削減できない分を植林・森林保護・クリーンエネルギー事業などで埋め合わせすること)を実施。
古木を活用することで、過剰伐採が続く発展途上国への植樹や間伐が活性化される仕組みです。
こうした森林保護の取り組みでも、SDGsの13番目の目標である「気候変動に具体的な対策を」と、15番目の目標である「陸の豊かさを守ろう」を実現しています。
また、お客様が「FSC認証」の環境にやさしい素材である当社の古木を使うことで、企業のSDGs活動にも貢献します。
さらに、現代の家づくりは、工場であらかじめ加工をしたプレカット材を、大工が現場で金物で接合する簡単な工法が主流です。
一方、昔の家づくりは大工が柱や梁に一本一本手刻みで仕口や継手をつくって建てていました。わたしたちはそうした古民家の解体と再利用を通じて、日本の伝統技法を継承しています。
大工の数は年々減少傾向にあり、ピーク時の3分の1ほどに減ってしまいました。しかも、伝統的な建築技術が必要とされない現在の住宅業界では、昔ながらの刻みや木組みができる職人の減少が喫緊の課題です。
そこでわたしたちは古民家の建築に精通した熟練大工を採用し、さらに古木にまつわる事業を発展させることで、多くの仕事を生み出して若手大工を積極的に採用しています。
こうして伝統的な建築技術や古民家の文化的価値の保全・継承に取り組んでいることが、SDGsの8番目の目標である「働きがいも経済成長も」につながっています。
なお、当社の採用に関しては、費用をかけなくとも全国から若手大工の応募があります。古木の空間をつくると自然と人が集まってくることを、身をもって実感しています。
また、わたしたちが12年間で手がけた店舗や施設の継続率は8割と、高いデータが出ています。これは古木によって落ち着きのある心地よい空間が生まれることで、従業員満足度・顧客満足度が向上するためと考えられます。
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わたしたちは古木の入手場所や年代、経路を一本一本管理し、古民家の来歴まで探ることでトレーサビリティを実現しているため、古民家に残るストーリーを新たな価値として創出することができます。
たとえば、静岡県の南熱海網代山温泉にある旅館「竹林庵みずの」の別邸は、長野県飯山市の蕎麦屋「とみくら食堂」だった築89年の古民家を移築しました。先祖から引き継いできた大切な家を生かしたいとの住み手の思いを受けたもので、移築後、ご子息がその旅館に行き、子どもの頃に刻んだ柱の背比べの跡を見つけて喜んだそうです。
こうした【トキ】の循環でも、SDGsの12番目の目標である「つくる責任 つかう責任」や11番目の目標「住み続けられるまちづくりを」を達成しています。
また、古木には空間の「格」を上げる効果もあります。「竹林庵みずの」は、客単価が以前の2倍近くになり、開業半年で予約も難しい人気の宿になりました。
わたしたちは、古木の魅力と古民家の住み手の思いを中継し、居心地のよい洗練された空間をプロデュースすることで、SDGsの8番目の目標である「働きがいも 経済成長も」、9番目の目標である「産業と技術革新の基盤をつくろう」も達成しています。
そして、自社メディア「KOBOKU通信」を通じて、日本の伝統的建築技法や現在の森林の状況など、環境や暮らしにまつわる企業や地域の取り組み、SDGsに深く関わる情報を発信することで、SDGsの4番目の目標である「質の高い教育をみんなに」を実現しています。
【SDGsバッジ】
長野工業高校と福祉系NPO法人との連携により、古木を使ったSDGsバッジを作成。高校生が削り出し、福祉法人の利用者が色を塗るパートナーシップ事業です。
年に一度、経営計画発表会を従業員、銀行、取引先、関係各社向けに実施。また、産官学における講演などで自社の取り組みを公表しています。