山翠舎は創業以来90年近く、建具屋から始まり施工のみを請け負ってきた時期を経て、
現在は古木の扱いに特化した店舗の設計・施工会社として展開しています。
このため、一般的な建築資材を使った施工と、古木使った施工の決定的な違いなどについて熟知しています。
これまで私たちがコラボレートしてきたデザイナーさんや建築家は、「古木を扱うのは初めて」という方が大半でした。
古木は扱いが難しい側面もあり、
通常の資材と同じように考えて設計や施工の段取りを組んでいると、現場で思わぬトラブルが発生し、工期の遅延につながってしまうこともあります。
そこで今回は、古木の扱いでポイントになる点として、その特徴・注意点をいくつかご紹介します。
【古木の特徴・注意点】
●硬い
木は一度目の生を終え、住宅の材として二度目の生を迎えます。
そして古木となって三度目の生が始まります。
この悠久の歴史の中で、経年変化により味わいを深めながら結晶化が進み、
木はますます硬くなっていきます。
現場加工は容易ではなく、力まかせに作業を行うと割れてしまうこともあります。
●重たい
古木は長い時間をかけて水分が抜けきった分、切り出した当時よりは軽くなっています。
とはいえ、店舗の内装で使う際は、迫力のある古木ほど大きいまま施してお店のシンボルとするので、
必然的に大変な重量となります。
そのため、搬入時や取り付け時などは、通常の店舗内装と同じ感覚の人工では対応できない場合もあります。
↑男性のスタッフ5人がかりで取り付けています
●まっすぐではない
現在まで残っている古木は、建築後50~100年という長い間、住まいをがっちりと支えてきた構造材が中心。
そうした材は、いずれも1本の丸太から手刻みで加工されたものです。
現代のようなプレカットされた木材とは異なり、一本一本形も違えば、「直線が出ていない」「表面が波打っている」といったことも、ごく当たり前です。
●色味がさまざま
複数の古木を空間づくりに取り入れる場合は、
施工技術はもちろんのこと、材の見極め・選定も大変重要になります。
「古木」と一口に言っても、その色味もさまざまです。
古木同士の色味の組み合わせがちぐはぐでは、希望のテイストの空間に仕上がらない事態も発生してしまいます。
木の表面をある程度研磨することで、色味の調整ができたとしても、やり過ぎてしまうと古木本来の味わいが失われてしまいます。
こうした古木の特徴・注意点は、図面などで表現することも難しく、経験やノウハウによって施工現場でクリアしなくてはいけないポイントです。
山翠舎では、これまで300店舗以上の古木を使った設計・施工実績があり、さまざまな状況で古木を使った最適な提案を行ってきました。
そのためノウハウの蓄積があり、求めに応じてそれらを提供する準備が整っています。
具体的には以下の体制が整っています。
【山翠舎が提供できる体制】
●3000本以上の古木ストックの中から提供
本社のある長野県には、常時3000本以上の古木をストックしている倉庫があります。
こうした古木は、単に古民家の解体現場から入手したものを保管しているだけではなく、
一本一本の品質を丁寧に確認し、太さ・長さ・樹種・形状はもちろん、
経歴や由来までをも記録しラべリング。
素材のトレーサビリティを徹底しています。
ご要望のテイストに応じて、最適な古木を手配いたします。
●希望のサイズに加工してから現場へ納品
先にも記しましたが、古木は硬いため加工には専門的な知識・技術が必要です。
昔の木組みや手斧の跡が残る希少な古木も、現代では正しい扱い方を知る職人は多くありません。
30 年以上にわたり古木に携わってきた山翠舎には、古木を知り尽くした熟練の職人・スタッフが揃っています。
それぞれの木の持ち味を活かしながら、ご希望の空間に合わせたサイズに加工仕上げを施し、施工現場へと納品します。
●古木を熟知する職人・スタッフの派遣
古木をご希望のサイズに山翠舎で加工をするとはいえ、施工現場で一切加工が発生しないというわけではありません。
古木は、まっすぐではないため現地で空間に合わせて微調整ができるように数センチの余裕を持たせて納品します。
その他、取り付けるための加工なども現地で微調整して行います。
こうしたノウハウを持ち合わせた熟練職人や現場監督を派遣します。
【施工例をご紹介】つい先日施工を終えた、南青山・ナプレさん
当社で、先日施工を行った、東京・南青山(表参道)にあるナプレさんの事例についてご紹介します。
※冒頭の施工前&施工後のお写真がナプレさんです。
既に営業されている3階建ての店舗を全面改装するプロジェクトについて、ナプレさんのオーナー様とデザイナー様からご相談をいただきました。
南青山をはじめ、ミッドタウン、横浜、名古屋で多店舗展開をしているナプレさんでは、古木を使った内装は初めてとのこと。
本社がある長野県の古木倉庫までオーナー様、デザイナー様に足を運んでいただき、古木を一緒に選定。
それを使い、まずは既存店の3階部分から、鉄骨梁を古木にするなどの施工を行いました。
「鉄骨梁を古木にする」と言っても、当然天井の梁を架け替えることはできません。
そこで、鉄骨のH鋼を覆うように古木を取り付けることにしました。
具体的にはH鋼がすっぽり入るように、古木をU字型にくり抜く加工を行ったのです。
↑H鋼をすっぽり覆えるように加工して納品。現場で微調整の加工を行います。
必要なサイズに合わせて、この加工を長野県の工場で実施。
その加工した材を現場へ納品し、現場ではそれを天井の鉄骨梁にかぶせてボルトで固定しています。
現場では、ボルト部分を見えなくする加工や、天井の既存のブレース(強度補強のため、たすき掛けで架けられている鉄筋)を上手くかわすような加工を古木に施します。
その調整の際に古木を数センチ短くするなど、現場での微調整を行いました。
この微調整も見越して、山翠舎では古木に最初の加工を施し納品しています。
↑鉄骨がむき出しの状態。たすき掛けの鉄筋ブレースも見えます。
↑加工を施した古木を鉄骨にかぶせます。ブレースもかわすように加工しています。